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おもためコラム

おもしろくて、ためになるコラムをお届けします。

くふうの話(1)

われわれ人間は昔から、日常生活の中で、日々、小さなくふう(工夫)を重ねながら生きて来ました。たとえば、夏の暑い日盛りには帽子をかぶり、汗ふき用のハンカチを持って外出します。これは暑さに対処するための、ささやかなくふうです。このように、ほんの少しくふうをするだけで、ずいぶん快適に過ごせるようになります。考えてみると人類は、生活・遊び・仕事と、あらゆる場面で、少しずつくふうを重ねながら進歩してきました。
今回は四回にわたって、戦国時代の武将たちがそれぞれ仕事をするうえで、具体的に、どのようにくふうをして成功して来たかという事を御紹介してみたいと思います。

太閤秀吉は、若いころは木下藤吉郎といいました。ある時、藤吉郎は主人の松下嘉兵衛から、兵糧小屋の番人の仕事を与えられます。現代でいえば、食品倉庫の守衛の仕事です。
それまでも、何人もの番人が居たのですが、毎夜毎夜、兵糧小屋からの食品盗難事件が絶えませんでした。番人がいるのに、なぜ、毎夜の盗難事件が絶えなかったかというと、番人が、仕事中にもかかわらず夜中になると居眠りをしてしまうからでした。昼間、精一杯働いたうえに夜中の見張り番ですから眠くなるのは当然です。それでも寝てしまったのでは番人の役はつとまりません。

ところが、藤吉郎が番人をつとめるようになってからは、不思議なことにピタリと盗難事件がなくなりました。なぜでしょうか。
藤吉郎だって、他の番人と同様、眠いのは変わりありません。でも番人の役はしっかりと勤めなければならないと考えた藤吉郎は、「そうだ、犬を飼おう」と思います。犬と一緒に番をするのです。やがて、夜中になると彼も眠くなる。どんなに目を見ひらいていても、そのうちにコックリ・コックリと居ねむりが始まってしまいます。「しめたッ」とばかり泥棒が忍んで来ますが、犬が泥棒のけはいを感じて「ワン・ワン」と吠える。泥棒は驚いて逃げ出す。同時に居ねむりをしていた藤吉郎は犬の吠える声で目を覚ます。まさに一石二鳥の効果でした。
こうして、藤吉郎が番人をつとめる夜は盗難事件がなくなったのです。かんたんな事のようですが、これも立派な一ツのくふうです。そんな、ごくささいと思われるくふうのつみかさねが、やがて藤吉郎を歴史上の大人物に成長させたのです。
又次回…。

神田松鯉(かんだしょうり)プロフィール
講談師
本名:渡辺孝夫(わたなべたかお)
出身地:群馬県前橋市
現住所:東京都板橋区
生年月日:昭和17年9月28日
芸歴:
 昭和45年 2代目神田山陽に入門 前座名陽之介
 昭和48年 二ツ目に昇進 神田小山陽と改名
 昭和52年 真打に昇進
 平成4年 3代目神田松鯉を襲名
得意ネタ:赤穂義士伝 徳川天一坊 ビジネス講談
出囃子:神田祭
受賞:
 昭和52年放送演芸大賞ホープ賞受賞
 昭和63年文化庁芸術祭賞受賞
著書:「善悪リーダー心得帖 - 神田松鯉ビジネス講談集」経営書院刊
趣味:ゴルフ・篠笛
社団法人落語芸術協会
http://www.rakugo-geikyo.or.jp/
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