日本理容美容教育センター

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おもためコラム

おもしろくて、ためになるコラムをお届けします。

夢をかなえるためのライフスタイル(3)

「つまる」ようにするのがプロ

「お掃除ばっかし」「下働きばっかし」という「ばっかし」の言葉を口癖のように言う人がいます。たしかに、来る日も来る日も同じ事をやっているのは味気ないに違いありません。

しかし世の中に、日々変化に富んだ職場があるでしょうか。事務職の人は扱う数字こそ多少の変化があるにしても、毎日机に向かって帳簿やパソコンを相手の仕事です。レストランで働く人は、客のオーダーを聴いて、お運びで一日が終わります。この人たちと皆さんと、根本的に違う点は、下働きからスタートして、シャンプー、フェイシャル、スキャルプ、シェーブ、ワインディング、カット、カラーなど、いろいろな技術を身につけて、一人前の理容師や美容師へと進んでゆく将来があるということでしょう。つまり将来の目標に向かっての第一歩の仕事が「下働き」なのです。

床を掃いたり、タオルを洗ったり、クロースを巻いたりするより、カットやパーマなどの方が楽しいし、働き甲斐もやりがいもあるのは確かでしょう。先輩たちが「下働きも理容美容の大事な仕事」と言って励ましてくれても、皆さんはそんな建て前諭では納得しないわけです。

働きの中で比較すれば、下働きはつまらない仕事というしかありません。バレーボールでも6人のレギュラーの中にいるのと、球拾いとでは、やり甲斐も楽しさもまるで違うのは当然です。しかし、ここが大切なのです。「いつまでも球拾いだけをやっているわけじゃない。今はこれしかできないのだから、このことを真剣にやっていくしかない。」と考えなければレギュラーにはなれないのです。

それには、「つまらない仕事」も仕事として受け止め、「つまるようにする」ことだと思います。どんなにつまらないと思える仕事の中にも、学ぶべきところが必ずあり、工夫するところがあるはずです。お客様が居るところで床を掃くという作業は、学校の教室の掃除とは大きな違いがあると思います。ほこりを立てず、気ぜわしさを感じさせず、手際よくホウキを扱うためには、大変な気遣いと技術がいるわけです。

客待ちから理容美容の椅子にお客様をご案内する短い距離ですら、気持ちよく足を運んでいただくことは、大げさに表現すれば至難のことだといえます。

どんな仕事でも決して馬鹿にせず、仕事から教わるという気持ちが大切なのです。一見して何でもない仕事の中に、修行を積んだ人の気働きを感じることがあるものです。

室町時代の能楽師世阿弥は、深い芸術哲学を持つ優れた人ですが、「平凡の中に秘めたる苦心工夫働きの凡ならざるところが芸の尊きところで候」と言っています。昔の人の言葉ですが、現代に生きる私たちの日々の暮らし方を教えてくれている気がします。

柴崎宣雄(しばざきのぶお)プロフィール
横浜市立横浜商業高等学校別科(理美容科)教諭。
主な著書:「ハートの経営」「オーナーになるための独立教本」「ヘアサロンのCS経営法」「増収増客戦略集」「なる本 理容師・美容師」「心の手帳」他。
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