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おもためコラム

おもしろくて、ためになるコラムをお届けします。

陰陽五行説と春の花セラピー

おもためコラムでの連載が最終回を迎えました。
最終回は花セラピーの根源となっている「陰陽五行説」について述べさせていただきます。名前を聞いただけで「難しそう」と思われるかもしれませんが、自然界と人間の体が密接であるということがよくわかる理論です。

なぜ花が心や体を癒してくれるの? それは花が持っている「気」、生命エネルギーによるものです。
この世に生きているものは、人も植物もすべて「気」を放っています。
東洋医学では、人の体を流れる「気」が滞り、循環が悪くなると、その箇所に痛みやむくみ、はれなどの症状が現れると考えます。そこで悪くなった人の「気」の流れを花の「気」で補い、健康な状態に戻そうと提案しているのが、花セラピーです。
その根源になっているのは、中国古代の哲学といわれる「陰陽五行説」です。

陰陽五行説図

これは自然界のあらゆるものが陰と陽、中庸に分けられ、バランスがとれてはじめて完成されます。また同時にあらゆる物質は五つの元素〔木・火・土・金・水〕に分けられると考えます。五行の法則を人体に当てはめると、
五臓〔木 - 肝・火 - 心・土 - 脾・金 - 肺・水 - 腎〕になり、色に当てはめると、
五色〔肝 - 青・心 - 赤・脾 - 黄・肺 - 白・腎 - 黒〕になります。(ちなみに花療法では、黒は紫に代えています)
花セラピーでは、五臓と五色の関係に注目し、花の色がそれぞれの内臓にどのような影響を与えるのかという観点から、花を分類しています。
相生とはお互いが、助け合い、前のものが次のものを生み出す関係、相克とは一方が強く、もう一方に影響を与える関係です。
たとえば、「火」に対応する「心」は血液の循環を表します。赤は「心」に直接作用しますので、赤い花を見ると、血行が促進され、血圧が上昇します。

花セラピーではこの考え方を花に結びつけ、さらに色が人に与える影響、花の香り、形を考慮し、バランスの崩れた体に足りない「気」を補い、多すぎる「気」を抑える効果をねらっています。

陰・陽・中庸の関係

自然界はボールのようなもので、その中は「気」で満ちています。「気」にも「陽の気」と「陰の気」があり、優劣競い合うことなく相互に作用しあい、バランスを保っているのです。例えば、春夏は「陽」で秋冬は「陰」、昼間は「陽」で夜は「陰」というように。
しかし自然界の陰陽は、はっきり二等分されるのではなく、「陽の中にも「陰」があり、「陰」の中にも「陽」があるという「中庸」の部分があります。
一例として真冬の小春日和が「中庸」にあてはまります。
花セラピーでは、この自然界の「陰」「陽」「中庸」の関係を花にあてはめました。

  • 「陽」の花は、赤・オレンジ・黄色などの暖色系の花や大きく華やかな花、香りが強い花です。(例:バラやユリのカサブランカ、ランなど)
    「陽」の花は活力を与え「気」を活発にするので、気分が沈んでいるとき、疲れているとき、血圧が低いときなどに飾ったり、また、そのような人にプレゼントするのに適しています。
  • 「陰」の花は、青・紫などの寒色系の花や白い花、淡い小さな花です。(例:スターチス、アイリス、カスミソウ、マーガレットなど)
    「陰」の花は鎮静作用があり、気持ちが落ちつくので、イライラしたり、血圧が高いとき、寝付けないときなどに飾ると効果的です。
  • 「中庸」の花はリラックスし、優しい気持ちになることができるので、極度の疲労を感じているときやホッと一息つきたいときに効果的です。「陽」の花では少し抵抗を感じるときには、「中庸」の花の方が適しています。(例:スイートピー、なでしこ、パステル系の花)

陰陽五行説は、自然界の複雑にして精妙な現象やことがらをわかりやすく分類し説明したものであるということをおわかりいただけたでしょうか?
また、一年を四つの季節に分け、さらに、季節の変わり目に着目し、特徴づけをしました。つまり春・夏・秋・冬の四季と、季節の変わり目である土用です。そしてそれぞれの季節にぴったりの色づけをしました。春は青色、夏は赤色、秋は白色、冬は黒色、そして土用は黄色というように。
今の季節は春。春の特徴といえば
春 … 草木が青々と生長する青い春は、青春という言葉になりました。人生の成長期も、この春のイメージと同じなので、青春といえば、十代後半の伸び盛りをいうようになりましたが、もともとは、四季のひとつをさすことばです。
春という季節は前号でも述べましたが、草木が芽を伸ばし、青々とし始めるときです。暦の上では立春(二月四日)から立夏(五月五日)までです。春は「木の芽どき」ともいいますが、この時期に多い病気は、アレルギー疾患や、精神、神経状態です。更年期障害のなかでも、イライラ、不眠症など「肝」の高ぶりが見られるようになります。このようなときは、環境を変えて気分転換をはかることも大切です。 春は花の多い季節です。生活の中へ春の花を取り入れ、元気の「気」をたくさんもらいましょう。
人はあまりにも忙しいと、季節の移り変わりにさえ気がつかなくなってしまいます。忙しい人には身近な春の花をプレゼントしてあげるのもいいですね。

次には春から初夏の花三点をご紹介しましょう。

カーネーション
花言葉「幸せをよぶ」
安心感に包まれて
近年のカーネーションの品種改良には、驚きと共に楽しみを感じております。花もちがよいもの、ボリュームがあるもの、花びらに覆輪が入ったおしゃれなもの、香りがあるもの、ユニークに花弁がひらいているスパイダー咲きなど、生産者の意気込みが伝わってきます。 カーネーションの栽培の歴史は古く、中世ヨーロッパでは、カーネーションのスパイシーな香りにクローブ(丁字)の香り成分が含まれていることから、ビールやブドウ酒などの香りづけに用いられたといいます。サラダにも使われ、大正時代の作家、芥川龍之介が食したことでも有名です。
キリスト教伝説によるとカーネーションは、十字架にかけられたキリストの姿を見送った聖母マリアの流した涙の後に生まれた花という説があるように母を連想する花でもあります。
カーネーションは母親のぬくもりを感じ、安心感と共に素直になれる花といえます。帰宅して開放感にひたりたいときなどに最適な花です。

マーガレット
花言葉「個性」
心が落ち着く
新学期や新生活に踏み出すこの時期は、喜びの中にもちょっぴり不安が入り交じっているのではないでしょうか?そんな微妙な気持ちをやわらげてくれるのが白いマーガレットの花。ギリシア語で「真珠」を意味し、小さな妖精の雰囲気がする可憐な菊です。恋うらないの花としても親しまれていますね。
マーガレットの花の色、香り、風合いに、清熱解毒作用があり、不安からくる動悸や息切れ、のぼせなどの症状改善に役立ちます。 また精神活動をコントロールする「肝」の高ぶりも静めてくれます。部屋に5〜6本飾り、ゆったりとした時間を過ごしてみましょう。 徐々に緊張がとけていくのを実感できるでしょう。
清楚で品があり、どんな花とも協調しあいながらも個性が光るマーガレット。花色は、白以外に黄色のキバナマーガレット、桃色のシェルピンクやピンクファッションなどがあります。
和名「木春菊」は、葉が羽状に切れ込み、シュンギクに似て、根元近くの茎が木質化することに由来します。

バラ
花言葉「赤 … 愛情。黄 … ロマンティック。ピンク … 家庭的。紫 … 理知的」など
明るい気分に
バラの栽培の歴史は古代エジプトやローマ時代にまでさかのぼり、以来「花の女王」として君臨しています。優雅さ、神秘性、気品、あらゆる美点を一身に備え、鋭いトゲでさえ高潔な美徳に変えてしまったバラ。花びらが香水に使われるように、甘い香りの強壮作用により、心身に活力を与え、明るく爽快な気分にしてくれます。
生活にハリがほしい時やもう少し積極的になりたい時に2〜3本身近に飾ると、気分が高揚し、自信が出て、前向きな生き方や意志表示がはっきりできるようになります。
かつて、クレオパトラもバラをこよなく愛し、眠れない夜は花びらを部屋中にうめつくし、その香りにつつまれて眠りについたとか、また愛の神ヴィーナスと共に誕生したといわれるバラの花。バラの花束が今も恋愛の小道具になるのも、あながち偶然とは言えないようです。数々のロマンを秘めたバラの花は、お年寄り、虚弱体質の人、不定愁訴のある人、そして何より最愛の人へのプレゼントに最適な花といえます。

片桐義子(かたぎりよしこ)プロフィール
花療法研究家。
1944年長野県生まれ。
日本女子経済短期大学(現嘉悦大学短期大学部)卒業。東洋医学に関心を持ち学ぶうち、植物の「気」、特に花の「気」に注目し、花療法の研究を始める。
著書に「花療法」、「フラワーセラピー花療法」などがある。
最近の著書「片桐義子の花日記」。
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