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おもためコラム

おもしろくて、ためになるコラムをお届けします。

お客様は察して欲しい

同じサービスをしてもお客様によって、満足する場合もあれば不満を感じる場合もあります。その原因は、お客様のタイプや状況の違いによるところが多いようです。

お客様のタイプによる違い

あるレディスファッション店を2人のお客様が別々におとずれました。二人とも同じ販売員の応対を同じように受けましたが、一人は「積極的に声をかけてくれて、次々と商品を薦め、コーディネート提案も十分だった」と満足しているのに、もう一人は「最初からつきまとわれてゆっくり商品を選べなかった」と不満でした。このように、同じ応対をしても、お客様によって受け取り方が違うことがあります。
この場合、一人は話し好きのお客様でした。話し好きのお客様は、会話を楽しみたい気持が強いので、積極的に話しかける販売員を好む傾向があるようです。話し好きのタイプのお客様は販売員が控えめ過ぎたり、あっさりした対応だったりすると、「冷たい印象」と感じる傾向があるようです。
もう一人はあまりおしゃべり好きではないお客様でした。買物での話のやりとりや販売員に相談することに煩わしさを感じるタイプです。このタイプのお客様は、むやみに声をかけられるのを嫌います。挨拶程度のやりとり以外は干渉されずに自由に商品を選ぶことを好みます。 このようにお客様のタイプにより、同じ応対をしても満足・不満が分かれます。
今、このお客様はどういう応対を望んでいるのか、さりげなくお客様の様子を見たり、質問したりしながらタイプを見極めて接客することが大切なようです。

シーッ!サービス

最近、百貨店の高島屋が、面白いサービスを始めました。静かにショッピングを楽しみたいというお客様に声かけを控えるサービスです。希望するお客様は、店内に用意したカードを首にかけると、店員からは話しかけないというしくみです。
カードの名称は「S.E,E,(シー)カード」といい、「シーッ」と、人差し指を口元にたてるしぐさの図柄が描かれています。英語のSilent、Easy、Eachの頭文字から取ったものだそうです。立川店と岐阜店だけで、まだはじめたばかりですが、何人か利用者が出てきているとのことです。
以前から、百貨店で買物しようとすると、すぐに店員が擦り寄ってきて、求めてもいないのにあれこれ話しかけたり、欲しくもない商品を勧められたりするのが嫌なので何とかしてほしいというお客様の声はありました。特に男性にその声が多いようです。男性のほうが売場でのおしゃべりが苦手ということもあるかもしれません。
「シーカード」をつけるアイデアは、「今日は放っておいて欲しい」と思っても、それを自分からはなかなか言いづらい顧客の心理を配慮した新しいサービススタイルといえます。客数も多く、販売員の熟練度にもバラつきがある百貨店にはあってもおかしくないサービスといえるかもしれません。

お客様は察して欲しい

理美容院などでサービスを受ける時にも、今日は疲れているので、その間を利用して静かに休みたいというお客様もいれば、スタッフとのおしゃべりを楽しみたい気分のお客様もいます。
お客様にはお構いなく、むやみに話しかけるスタッフも困りますし、逆にお客様が話しかけているのに会話が一向にはずまないスタッフにもお客様は物足りなさを感じるでしょう。
「そっとしておいて欲しいのか」「楽しくおしゃべりしたいのか」「髪の悩みについて専門的なアドバイスが欲しいのか」などをお客様の様子から察知して、臨機応変に対応してくれる理美容師はお客様にとって嬉しい存在といえるでしょう。


お客様は千差万別です。して欲しいサービスも人によって様々です。また、同じお客様でも日々の状況によって感情は変化しています。
対人コミュニケーションについては、いろいろなマニュアルや本が出ていますが、人を相手にする仕事には、これでいいという正解はないようです。一般的なマナーや約束事を守ることはどんな場合にも基本ですが、要は相手の好みや心理状態をいかに見極め対応できるかがポイントといえます。
目の前にいる一人一人のお客様との一瞬一瞬の出会いを大切にする中から、お客様が何を望んでいるのか、どうして欲しいかを察するサービスが求められているといえます。

長原紀子(ながはらのりこ)プロフィール
マーケティングコンサルタント。
(株)伊勢丹研究所勤務を経て、1995年(有)長原マーケティング研究所設立。企画・調査受注のかたわら、小売業を中心に研修・講演・執筆を行う。
著書に「だからわたしはこの店に行きたい」(監修:商業界)、「お客がわかれば売り方がわかる」(商業界)、「女性がつくる百貨店」(共著:ストアーズ社)、「ハートフルセールス」(繊研新聞社)。
青山女子短期大学非常勤講師(商品学流通論)。
経済産業大臣登録 中小企業診断士。
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