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サービスの値段
■1000円カットは本当に安い?
1000円カットの店が増えていますが、それって本当に安いといえるのでしょうか。
1000円カットの場合、シャンプーも何もせず、カットだけなので、理美容師がサービスする時間は約10分です。
フルコースのカット(理容室ならシャンプー、カット、シェービング、美容室なら、シャンプー、カット、ブロー)の場合、4000円〜5000円くらいの理美容室が多いですが、サービスする時間は40〜50分です。
1000円カットでも、普通のカットでも、サービスの時間で換算すると、だいたい10分1000円で変わりません。
1000円カットは格安のように見えますが、お客にとっても、店にとっても特別に安い値段とはいえないということになります。1000円で、それに見合ったサービスをするか、4000円で、時間も手間もかけてサービスを行うかという、ビジネススタイルの違いに過ぎません。
サービス業は、サービススタッフの技術や時間を売るビジネスですから、時間を細切れにしてサービスを売れば単価は安くすることが可能だからです。
■サービス価格、10分1000円の法則
他のサービス業でも、10分で1000円という価格はなぜか多いようです。
例えばクイックマッサージはだいたい10分で1000円です。なかには10分945円という店もあります。これなどは戦略的な価格設定といえるかも知れません。10分1000円は当たり前なので、安さが印象に残ります。
ネイルサロンやメイクアップなどでもクイックで安いことを売り物にしたサービスが出ています。こちらは、20分2500円などやや高めですが、眉カットなどでは10分1000円の価格設定が多いようです。
以前、プロのメイクで20分2000円をキャッチフレーズに売り出した銀座のクイックメイクサロンがありました。その店は、今は少し料金を上げ、眉カット15分 2100円、メイク30分4200円になっています。その店が開店した7〜8年前は、メイクサロンは、消費者になじみのないサービスでしたから、顧客を掴むために、割安感のある分かりやすい価格設定をし、顧客が定着してきた現在は、少し価格を上げているものと思われます。
ちなみに、このように市場導入期に低価格を設定することで、急速に顧客を掴もうとする価格政策を浸透価格政策(ぺネトレーションプライス)といいます。逆に、最初は高価格を設定して、高くてもお金を払う層を掴み、その後、一般の人向けに弾力的に価格を下げて行く政策を上層吸収価格政策(スキミングプライス)といいます。
いずれの価格政策をとるにせよ10分1000円をベースに、多少のプラスまたはマイナスをするのが消費者向けの一般的なサービスの価格設定といえます。ただし、超高級店ですと、掛け算になり、その1.5〜2倍はします。
サービスは一度に作り置きできず、1回づつ人間が行うものなので、大量生産によるディスカウントができません。モノの値段が安売り店や100円ショップで通常価格の半値やそれ以下になるようにはなかなかなりません。サービス業では、サービスに費やす時間や周辺サービスのカットなどで割安感を工夫することになります。
■省時間サービスも一つの価値
短時間で安いサービスはお金が節約できると利用する人もいますが、時間のない人にも歓迎されるサービスです。今は、お金があっても時間がない人も増えていますから、短時間でヘアスタイルがきれいになるということに価値を見出す人も増えています。
そこで、同じ理美容室でクイックメニューと一般メニューのどちらでも選べる理美容室も出てきています。
マッサージ店などでは、時間によってサービスを選べるメニューの店が増えていますから、サービスを時間と内容で選べる理美容室が出てきても利用者は違和感を持たないのではないでしょうか。ちょっと様子を見ようという利用者のためのお試しサービスとしてクイックメニューを位置づけても良いかも知れません。
青山女子短期大学非常勤講師(商品学流通論)。
経済産業大臣登録 中小企業診断士。