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おもためコラム

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経営の脱メタボ

今春から、メタボリック症候群の予防・改善が義務化されました。メタボリック症候群とは、内臓に脂肪が蓄積した肥満(内臓脂肪型肥満)によって、さまざまな病気が引き起こされやすくなった状態を指します。
厚生労働省の平成16年国民健康・栄養調査によると、40〜74歳で、男性の2人に1人、女性の5人に1人がメタボリック症候群か、その予備群であると報告されています。
メタボリック症候群の人は、高血圧、糖尿病、高脂血症などを発症しやすく、最近の研究で、これら危険因子の重複により動脈硬化のリスクが高くなることがわかってきました。そこで、今までは病気以前とされてきたメタボリック症候群が、治療の対象として考えられるようになってきたというわけです。 国が音頭をとってメタボリック症候群を予防するのは日本がはじめてのようです。「そこまで、国がやる必要があるのか」「高齢者の医療費を抑制させるためには、病気を未然に防ぐことが必要だ」等々、賛否両論が出ていますが、今春から40歳以上の医療保険者にメタボリック症候群に着目した健診および保健指導の実施が義務づけられました。
今回のメタボリック症候群の診断基準では、内臓脂肪の蓄積はウエスト回りで判定し、男性85cm以上、女性90cm以上を基準値としています。これを上回る場合、血糖値、脂質、血圧、喫煙歴などによって、適切な生活指導が行われることになります。
早速、巷では、余分な内臓脂肪対策のため、体組成計、機能性下着、歩数計などの商品が売れているようです。ウオーキングやハイキングなど歩くレジャーもますます中高年の間で盛んになっています。

経営にも必要な脱メタボ対策

長年の過剰摂取と運動不足によって蓄積される内臓脂肪ですが、店舗経営においても、似たような状況が見られます。
例えば、ある大型店の店長は、「うちの店はメタボリック症候群なのですよ」とぼやいています。そのわけは、なかなか売上げが伸びないのでついついセールを多発してしまうことにあります。セール売上げが前年実績になってしまうので、セールを止めることができません。そうなると、お客様も、その店は待っていれば、早めにセールになるので、プロパー商品をなかなか買いません。その繰り返しで、セールなしでは回らない店になり、その結果、店の収益は圧迫されています。店長は、このセール依存の体質をメタボリック症候群に例えていたわけです。
この店の場合、一見体格はいいのですが、中身は健康体ではなくセール依存になっていることが問題です。余分な脂肪を溜め込んだ体を筋肉質に変え、体質改善をすることが必要かと思われます。
売上げ面だけでなく、費用面でもメタボリック症候群は見られます。
健康な体は、必要なものだけを摂取して、摂取したものは使い切っていけば余分な脂肪は溜まりません。それを経営に当てはめると、お客様に対して価値を生まない、過剰な設備や備品などに余分な投資をしていることは問題です。よいと思って導入した設備等が使われていないような場合は、できるだけ早く処分したほうがよいでしょう。
また、まとめて購入すれば安い消耗品などはまとめて購入すると、ちりもつもれば山となるで大きな節約になります。ある居酒屋チェーンでは、客席のしょうゆを瓶単位で購入していました。それを大瓶でまとめ買いして、卓上瓶に継ぎ足す方法にしたら、大幅にコストが圧縮できたそうです。この居酒屋チェーンでは、ユニフォームもリースから買取り方式に変え、コストを圧縮できました。
こうして、放っておけばメタボになるかもしれない小さなムダもやり方を変えることで、減らすことができます。理・美容店であれば、節水・節電なども大きなテーマになると思います。
ある記事に、「美容院の冷房がきつすぎる」という投書が載っていました。店に言ったのですが、「暑いというお客様もいるので」ととりあってもらえなかったそうです。クールビズ、ウオームビズがいわれて数年たちますが、店舗やサービス施設などではまだまだ夏は冷やし過ぎ、冬は暖房の効き過ぎというところも多いようです。空調などを見直すだけでも、コストダウンに繋がる可能性があります。
照明器具なども、案外電気代を使います。発光ダイオード(LED)、有機ELなどの電球に切り替えることで、電球代は高いですが、電気代が安くなり、10倍長持ちするということですから検討の余地があるのではないでしょうか。
節水シャワーヘッドや水道蛇口にとりつけて節水する器具などは以前から普及していますが、まだのところがあれば取り入れて見る価値はあると思われます。

今春は、様々な商品が値上げされ、今後も続きそうな気配です。家計にも経営にも節約ムードが高まっています。節約は、ある面、エコロジーにも繋がります。新しい技術を利用した節約アイテムにも注目してみましょう。
長く続いた不況で、物価が下がることに私達は慣れてきました。しかし、景気の見通しが不透明な中、諸物価が上昇する局面へと、経営環境は大きく変わっています。そうした中で、これからは、ますます、必要なものだけにコストをかけ、質の高い売上げを確保する脱メタボ経営が求められそうです。余分なモノを溜め込んだ経営体質を筋肉質に変えていく、健康な店づくりが必要と思われます。

長原紀子(ながはらのりこ)プロフィール
マーケティングコンサルタント。
(株)伊勢丹研究所勤務を経て、1995年(有)長原マーケティング研究所設立。企画・調査受注のかたわら、小売業を中心に研修・講演・執筆を行う。
著書に「だからわたしはこの店に行きたい」(監修:商業界)、「お客がわかれば売り方がわかる」(商業界)、「女性がつくる百貨店」(共著:ストアーズ社)、「ハートフルセールス」(繊研新聞社)。
青山女子短期大学非常勤講師(商品学流通論)。
経済産業大臣登録 中小企業診断士。
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