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おもためコラム

おもしろくて、ためになるコラムをお届けします。

動き出した社会貢献型消費

最近、「特別に欲しいものがない」という消費者の声を耳にします。日々、消費する食品・日用雑貨などの生活必需品の購入は別として、消費者の心を動かすモノやサービスがなかなか見つからないようです。
以前は、「自分へのご褒美」消費で、何か一点高価なモノを買ってみたり、ちょっと高いランチを楽しんでみたりすることが盛んでした。今でも、それがなくなったわけではありませんが、その感激も薄れてきたのでしょうか。銀座などに軒を並べた高級ブランドショップも、東南アジアの観光客の利用が増える割には、日本人客の関心は以前ほど熱くないようです。
代わって、最近の消費者の気分は、「世の中の役に立つような消費をしたい」という方向に向かっているような気がします。
お金を使う大義名分が「自分へのご褒美」から「社会への貢献」に変わり始めているのではないかと感じられます。

社会貢献に繋がる消費欲求

今年は洞爺湖サミットのテーマが「環境問題」だったこともあり、エコ消費への関心が今までに増して高まっています。
家電売場は、「省エネ」「エコ家電」のオンパレードで、買い替え促進に力が入り、需要も高まっているようです。
住宅設備や自動車などの大型商品でも、省エネ効果の高いものが売れています。
食品では、フードマイレージという考え方が出てきて、移動距離の少ない(CO2排出量の少ない)食品をできるだけ食べようと、地元でとれた作物を食べる‘地産地消’の動きが盛んです。‘地産地消’は、食品販売だけでなく、レストランなどの外食産業にも広がっています。
‘地産地消’から、さらに進んで、自宅の庭やベランダで育てた野菜や果物などを食べる‘自産自消’も目につくようになりました。大手スーパーなどでは、野菜やハーブの苗や種が売れ筋商品になっています。‘自産自消’は、原油高で高騰気配の食品への家計防衛策としても関心を集めています。
エコ消費も含めて、「消費を通じて、少しでも社会の役に立ちたい」「何か消費するなら、世の為、人の為にもなれば、尚よい」と考える社会貢献への欲求が高まっています。しかし、個人個人では、なかなかやり方もわからず、仲間も見つからず、きっかけがつかめない人も多いようです。
そこで、消費が社会貢献に結びつくような仕組みの提供が始まっています。
テーブルフォートゥー運動などもそのひとつです。先進国の肥満や生活習慣病の解消と開発途上国の飢餓の解消を同時に目指す日本生まれの運動です。具体的には、ローカロリーのヘルシーメニューを社員食堂やレストランで食べると、一食あたり20円が開発途上国に寄付されるという仕組みです。20円は途上国の学校給食1食分の金額で、集めた寄付金で事務局は途上国の子供たちに学校給食を提供します。食品宅配業者のヘルシーメニューなどにも広がりはじめ、健康によい食事をしながら、途上国の子どもの食事に貢献できると、話題を呼んでいます。
社会貢献をマーケティングと結び付けて行うことを、コーズ・マーケティングといいます。コーズ・マーケティングでは、企業は製品の売上に応じてNGO等に寄付を行う仕組みをつくり、「製品の価格に寄付が含まれているので、その製品を買うことによって、消費者は社会問題の解決に貢献できる」ことをPRし、製品のマーケティングの一環として活用します。一時的な製品のキャンペーンに止まらず、企業のイメージや評判を高める効果が期待され、注目を集めています。

理・美容師の社会貢献活動

理美容の世界でも、近年、社会貢献を意識した活動が増えています。
老人ホームなどで、定期的にお年寄りのヘアカットの無料サービスを行っている美容師や理容師のグループがあります。お年寄りに喜ばれるだけでなく、身だしなみを整えることで、明るくなるお年寄りを見て、改めて、理美容の仕事の意義を再認識する人も多いといいます。
ある美容院では、一口千円の募金で髪をカットする「チャリティカットデー」を催しました。美容室のスタッフがボランティアでカットし、集まったお金は県内の福祉活動に寄付しています。
また、子どもの日に中学生以下の子ども達を対象にしたチャリティヘアカットを行っている美容院もあります。カット料金の半額を、瀬戸内海の自然再生のための基金に寄付しているところもあれば、開発途上国に学校を建てる寺子屋運動に寄付しているところもあります。
何かで、「人の役に立ちたい」という顧客の良心に響く仕組みや、場を提供することは、理美容業にとっても、顧客との共感づくりの良い機会になることでしょう。
このような社会貢献活動は、すぐに売上や利益には結びつかないかもしれません。しかし、長い目で見ると、お客様から共感を得て、良い評判を獲得することは、個々の店のイメージアップにも、業界全体のイメージアップにも繋がります。
また、従業員が自分の仕事の価値を再認識し、プライドを持って生き生きと、働くためにも、社会貢献活動は良い機会になります。
消費者の意識が変化している中で、店として、1人の理・美容師として、社会貢献活動への取り組みを視野にいれる時期にきているといえるかもしれません。

長原紀子(ながはらのりこ)プロフィール
マーケティングコンサルタント。
(株)伊勢丹研究所勤務を経て、1995年(有)長原マーケティング研究所設立。企画・調査受注のかたわら、小売業を中心に研修・講演・執筆を行う。
著書に「だからわたしはこの店に行きたい」(監修:商業界)、「お客がわかれば売り方がわかる」(商業界)、「女性がつくる百貨店」(共著:ストアーズ社)、「ハートフルセールス」(繊研新聞社)。
青山女子短期大学非常勤講師(商品学流通論)。
経済産業大臣登録 中小企業診断士。
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