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共感力
接客では、共感力も大切な要素です。顧客の身になって一緒に考え、アドバイスできる接客力が求められています。
■なぜ、同年輩の販売員が良いのか
化粧品売場についてのおしゃべりをしていた時のこと、「ピカピカのお肌の販売員に薦められてもね〜」と年配の女性が不満顔でいいました。「そうそう、私も。あまりに若い販売員は苦手だわ」と別の人も賛同意見です。二人とも50代以降の女性達でした。
彼女達がいうには、そのくらいの年代になると肌の状況も若い人とはだいぶ違ってくるので、「乾燥が」「しわが」「しみが」と相談したいことが、山ほどあるのですが、若い販売員にはなかなか相談しにくいそうです。
というのは、相談しても相手に実感がないので通じないことが多いからです。お肌ピカピカでなくてもいいから、少し近しい年代の販売員なら、相談内容もすぐにわかってくれるし、親身になってくれる感じがするので、同じお薦めでも信頼感があるとのことでした。
若い販売員でも一通りの教育は受けているので、どんな相談でも受け答えはしてくれます。でも、若い人には想像できない肌の変化が加齢とともに起こってきます。そのことに対する理解力・共感力は、年代を経た販売員のほうがあるというわけです。
ファッション衣料や雑貨の売場でも、同じことがいわれます。こうした売場には比較的若い販売員が多いですが、年配客は、落ち着いた感じの年長の販売員がいると相談しやすく感じます。
若い販売員から、「これが一番売れています」「人気です」といわれるよりも、年長の販売員から「私も着ているのですが、とても良いですよ」といわれた一言が説得力になることが多いのです。
シニアに人気なことで有名な東京の巣鴨地蔵通り商店街は、販売員も高齢者が多いことで知られています。高齢者の顧客は、横文字言葉や早口言葉を理解できなかったり、聞き逃したりするので、シニアと同じペースでゆっくり会話をしてくれる年配の販売員のほうが喜ばれるのです。
高齢社会で、顧客の年齢の幅も広がっていますが、接客現場は、若い人ばかりというケースも多いようです。しかし、このような顧客心理も考え、場合によっては、顧客と同年代の接客スタッフを増やすことも必要かもしれません。
■若い人は、同年代か少し上の人がいい
共感という点では、逆に若い人には、自分達の趣味や共通の話題で盛り上がられる若い接客スタッフが好感持たれます。
アドバイスが必要な場合でも、少し、年上のお姉さん・お兄さんくらいのスタッフだと、相談しやすいようです。また、良いと思うスタイルや色などの感覚にも年代差があるので、あまり年配の人のアドバイスはピンとこないということもあります。「ファッション店で、パーティに行くので手持ちのボトムに合う華やかなトップスが何かありませんかと年配の販売員に聞いたら、すごく地味なものを薦められてがっかりした。」などという若い人の話を良く聞きます。華やかさのイメージが若い人と年配では、違っているのでしょう。
■幅広く顧客に共感される店になるためには
良く見ていると、美容院などでも顧客の幅の広い店は、ベテランのスタッフが年配の顧客、若いスタッフが若い顧客というように分担して、うまく接客しているようです。
だいたいの店は顧客とともに年をとっていく運命にあります。理容師・美容師さんと若い頃からおつきあいのあった顧客が気に入って通い続けているうちに、店の顧客層が高齢化していくからです。そうした店は高齢者にとっては居心地が良いのですが、年取った顧客はいつか亡くなってしまったりして、次第に店はさびれてしまいます。そうならないためには、次世代のスタッフも、しっかりと準備する必要があります。
接客するスタッフのゆるやかな新陳代謝と、若い世代の育成が、いつまでも古びない店であり続けるために大切なことがわかります。
顧客は、自分の悩みについて、共感を持って受け止め、解決策をアドバイスしてくれたり、はっとするような提案をしてくれたりする、顧客の立場にたった接客を求めています。共感力には、接客スタッフの経験や洞察力がものをいいますから、顧客それぞれの年代に合ったニーズを受け止めることのできるスタッフが臨機応変に対応することで、より満足度の高い店になることができます。
青山女子短期大学非常勤講師(商品学流通論)。
経済産業大臣登録 中小企業診断士。