日本理容美容教育センター

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おもためコラム

おもしろくて、ためになるコラムをお届けします。

不況に強いビジネスの理由

昨年秋以降、株安・円高で、好業績を誇った輸出産業の企業決算が大幅に下方修正されるなど、不況ムードが広がっています。しかし、不況だから、すべての商いが不調かというとそうでもないようです。不況下でも好業績を上げているものにはどんなものがあるか見てみましょう。その中に現状を打開するヒントが隠されているかもしれません。

バリューを提供する

好景気の時には、多少高くてもいいものなら売れますが、不況期に強いのはなんと言っても安いものです。消費者にとって価格以上の価値のあるもの、バリュー商品が売れます。
低価格で品質の良いものを提供する小売業のユニクロ、ニトリなどが売上好調と聞きます。いずれも、円高による商品調達コストの低下を消費者に還元し、より安く価値のある商品を顧客に提供することに注力しています。例えば、ユニクロは東レと共同開発したヒートテックという機能素材でできたTシャツなどが人気で、他の衣料品小売業が低迷する中、一人勝ちの状況となっています。ただ安いだけでなく、付加価値のあるもの、その店でしか買えないものを戦略的に仕掛けて顧客に提供し続けていることが成功要因といえます。

安さプラスおまけの魅力

雑誌では、昨年9月から従来の価格を思い切って下げ、おまけを充実させた宝島社の女性誌、「InRed」「spring」が好調です。9〜11月の販売部数を約6割伸ばし、雑誌廃刊が相次ぐ出版業界で、ひとり気を吐いています。また、宝島社は一つのブランドだけを紹介するブランドムックを多数出版し、雑誌だと数頁しか見られないブランドの世界に浸れると読者に好評です。こちらもブランドバックなど特製のふろくがつくことが好評で、ブランドメーカー側も実需(※)につながる新しいコミュニケーションメディアとして注目しています。宝島社は雑誌の編集会議に編集者だけでなく、経営者や広告、販売、広報、宣伝の責任者も参加し、複合的な視点から売れる雑誌を検討する中から、業界の常識を破る発想を生みだしたといいます。
表紙や特集をどうするかといった戦術的な工夫を超えた、雑誌としての新しいマーケティング戦略が功を奏したといえます。

来店頻度を高める

飲食業では、高級店に閑古鳥が鳴く中、マクドナルドの業績が好調です。一時の低迷をよそに、朝メニューなど、新しい組み合わせメニューや、食べ応えのあるプレミアムバーガーなどを開発し、メニューのバリエーションを増やしています。また、メニューを時間帯毎に変化させることでことで、同じ客が、朝、昼と2回利用できるような店づくりを行っていることもポイントです。消費者は不況になると、1回当たりの消費を小額で抑えようとしますが、1回は小額でも、来店頻度を増やしていくことで売上増につなげることができます。セットでの割安メニューが消費者にお得感を与えていることも見逃せません。

スマートショッパーを呼び込む

ネット販売や通信販売も好調です。ネット販売や通信販売は価格の比較がしやすく、最も安い商品を検索して買おうとする節約志向の消費者心理に適っています。また、節約志向の消費者は、買物に行くとつい余分なものも買ってしまうことを嫌います。通信販売やネット販売だと目的のものだけ買うので節約につながると考えます。配送料はかかりますが、交通費やガソリン代と比較すれば安く済むこともしっかり計算しています。不況時には、節約したいと誰もが考えます。先行きが不安なのでお金を持っていてもむやみに使うことを控えるようになります。でも、「これなら無駄遣いではない」「合理的な買物だ」と納得できれば、消費者は行動しやすくなります。「賢い消費者=スマートショッパーでありたい」という消費者心理をいかに刺激するかがポイントになります。無駄を省く合理的な買物の場を提供するネットショッピングはその意味からも成功しているといえます。インターネットの普及もあいまって一般小売業が厳しい中、ネット販売は好調を続けています。

リピーターを育てる

08年度の東京ディズニーランドの入園者は過去最高で、入園者一人当たりの売上も前年を上回る予想です。昨年行った25周年アニバーサリーが好調で、東京ディズニーランドホテルがオープンしたことも寄与しているとのことですが、東京ディズニーランドは、バブル崩壊後も売上を伸ばしたことで知られています。むしろ、不況で海外旅行などを控えた人々が、近場で楽しもうという傾向も追い風となっているようです。日ごろから来園者に魅力的なアトラクションとホスピタリティーで顧客満足を与え、リピーター層の厚いことが、不況でも強みを発揮しているものと思われます。

バブル崩壊後の不況時にもあった傾向ですが、不況もしばらく続くと消費者は、節約に飽きて、ちょっとした発散を求めだします。特に女性にその傾向が強いのですが、小額で楽しめるちょっとした贅沢から消費が動き出したのです。今年もしばらくしたら、まずは服飾雑貨や化粧品など小物からちょっとした贅沢がはじまるようになることは確実だと思われます。美容でも短時間・リーズナブル価格のクイックメイクアップサービスなどが、その頃登場しています。不況は、今までのビジネスのやり方や業界の常識を見直し、新しいサービスを生み出す変化の時ともいえます。

※実需(じつじゅ)…実際の需要のこと。
長原紀子(ながはらのりこ)プロフィール
マーケティングコンサルタント。
(株)伊勢丹研究所勤務を経て、1995年(有)長原マーケティング研究所設立。企画・調査受注のかたわら、小売業を中心に研修・講演・執筆を行う。
著書に「だからわたしはこの店に行きたい」(監修:商業界)、「お客がわかれば売り方がわかる」(商業界)、「女性がつくる百貨店」(共著:ストアーズ社)、「ハートフルセールス」(繊研新聞社)。
青山女子短期大学非常勤講師(商品学流通論)。
経済産業大臣登録 中小企業診断士。
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